聖人の血を分け与えられた人々は
沸騰したその血に全てを灼かれて操られたように狂い出す。
聖人の骨を分け与えられた人々は
手にした力の加減がわからず躊躇うことなく叩きつける。
未満の器において暴れ狂うその血を、骨を、
神は全ての人間に平等に分け与えた。
誰もがそのDNAを持ちながら到達する事はできず、
その罪を深めていく。
骨は別れた血を呼び、血はやがて骨に感作する。
神に与えられたまま育み、
満たないその器から溢れさせる。
聖人とは善良なだけの生き物ではない。
衝動的な血を、暴力的な骨を、その器の中に秘めている。
どれだけ波立たせても、どれだけ揺さぶられても
一雫そこに落とすだけで全てを凪ぐ。
叩きつけるように強いその雫は、一定の波紋を作り、
聖人とは、同じ人間である。
神や聖人を神聖視する事で信心を持ち、
信心は人間に安寧をもたらす。
聖人の血を持つ者は、
聖人の骨を持つ者は、己に聖人あらざる部分を見て絶望する。
罪の香りは甘く漂う。
たった一瞬、そこに展かれた過ちの薫香に人は惑わされてしまう。
誰もが聖人のDNAを持ちながら到達する事はできず、
生まれついての罪を深めていく。
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